脳卒中上肢治療に必要な知見
皆さんこんにちわ。
久しぶりのブログ更新となり、申し訳ありません。
今までと少しお伝えさせて頂く内容を変えて、今回は脳卒中上肢治療に必要な知見をお話ししたいと思います。
上肢治療を考えていくなかで、難易度調整は重要ですよということは皆さんご存知だと思います。
そして難易度調整の仕方(関節運動の数、使用する物品、使用する環境などなど)はいっぱいあり、非常に難しいと思います。
なので今回は難易度調整についてシンプルにお伝えしていきます。
簡単にいうと….(本当は難易度調整は難しいですが)
少し難しい課題、少し代償動作が生じる課題、7割程度成功できる課題をしていくことが脳の可塑性を惹起しやいようです。
お猿さんでの実験で….
一回のチャレンジで餌が取れる大きな穴から餌を取らせた猿の一次運動野の領域の前腕・手関節・手指の領域の活動を調べると、若干脳の領域が狭くなっていた。
しかし、小さな穴から餌を取らせ、最初は取るのに約18回チャレンジが必要で、次第に一回のチャレンジで餌が取れるようになる課題をした猿の一次運動野の前腕・手関節・手指の領域は約3%拡大した。
という実験があるようです。
なので難易度調整は少し難しい課題、少し代償動作が生じる課題、7割程度成功できる課題を目安に提供していくことが大切になります。
そしてこの実験で驚いたのが、簡単過ぎる課題を提供していると、上肢を動かしているにも関わらず、一次運動野の領域が狭くなってしまう。という所です。
では、本日はここまでにします。
最後までお読み頂きありがとうございました。
小脳について②
みなさんいつもブログを見て頂き、ありがとうございます。
本日もさっそく小脳についてお話をしていきますね♪
前回のブログ↓
で、小脳は脳全体でいうと面積は小さいのに…神経細胞(ニューロン)はとても多いですよ~♪というお話をさせて頂きました。
それより前のブログでは感覚入力で、上肢の動きに変化が得られました♪というお話もさせて頂いて、小脳の話をしておりますので、以前のブログも是非参照してください。
では、今回は小脳の中身を説明していきます。
~図:プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第2版より引用~
上記の図の左に記載してあるように小脳は主に入力として…
①脊髄からの入力:脊髄小脳(以前のブログでお話したように、非意識性の感覚)
②橋からの入力:橋小脳
③前庭からの入力:前庭小脳
の3つからの入力を受けます。
簡単に説明すると
・脊髄からは非意識性の感覚を受ける
・橋や前庭はバランス機能に重要な役割を担っている場所であり、バランスなどを調整する情報を受ける
ということになります。
その結果、上記の図の右に記載してあるように小脳は主に出力として…
①運動遂行
②運動のプログラミング、プランニング
③体の平衡、眼球運動
を行います。
簡単に説明すると
・関節運動を実行してくれたり、補正してくれる
・運動を計画したり、一連の運動のパターンを保存して実行したりしている=要は運動の記憶を司っている
・バランスを調整してくれている
ということになります。
なので簡単にまとめますと…
脊髄や前庭・橋からの感覚情報を受けて、運動を発現し、同時にバランスも調整してくれているということですね♪
そして小脳皮質は
~図:プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第2版より引用~
上記の図のような感じになっており、紫色のプルキンエ細胞という細胞が綺麗に並んでいるそうです。
何故綺麗にプルキンエ細胞が並んでいるかというと、先ほど説明したように小脳は運動実行や姿勢を調整してくれる運動を担ってます。
その運動に関わる情報をモジュール化してくれているといわれています。
どういうことかというと運動といっても、「歩く」とか「ボールを投げる」「蹴る」「ジャンプ」「しゃがむ」「物をとる」などなど数えきれない運動の種類があると思います。
その莫大にある運動を…
「このプルキンエ細胞は歩く運動を記憶して、実行・調整する」
「このプルキンエ細胞はボールを投げる運動を記憶して、実行・調整する」
「このプルキンエ細部は蹴る…」
「このプルキンエ細胞はジャンプ…」
「このプルキンエ細胞はしゃがむ…」
「…」
「…」
「…」
みたいな感じで一つの運動に関わる情報を整理するため・記憶するために綺麗に並んでくれているようなんです♪
とにかく運動の情報を綺麗に丁寧に記憶してくれていて・運動実行もしてくれるってことなんです♪
なので、例えば脳卒中の方々が運動を実行できない場合、もちろん外側皮質脊髄路などの損傷により麻痺を呈していて運動が行えなくなると思います。
そしてみなさんは恐らく、いや私はずっとこの外側皮質脊髄路をなんとか賦活するためにリハビリテーションを提供してきました!
この経路(外側皮質脊髄路)が運動を実行してくれているものだと思っていました。
しかし今回述べてきたように、小脳も様々な感覚情報を受けて、運動を実行してくれているんですね♪そして、運動の記憶が綺麗に並んで保存してあるんです♪
なので脳卒中の方のリハビリを考えるときに小脳のことも考えてほしいんです!!!!!
なんで?
・大脳皮質より小脳皮質の方が神経細胞がいっぱいあるから、運動にも大きく関与している(脳卒中はその大脳皮質から下行する外側皮質脊髄路が損傷を受ける)
・小脳にある神経細胞(プルキンエ細胞)は綺麗に並んで一つ一つの運動を記憶していて、運動を実行してくれている
からなんです♪
こういったことを考えていくと…
感覚入力で上肢の操作性が変化する
っていうことはありえることになる気かしませんか?
どうでしょうか?
きっと、いや必ずあり得ることだと私は思ってます♪♪
みなさんのリハビリテーションを提供する幅が広がることを祈って、今日のブログはここまでにしますね。
最後まで読んで頂きありがとうございました♪
小脳について
いつもブログを見て頂きありがとうございます♪
本日は小脳について書いていこうと思います。
~図:プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第2版より引用~
小脳は脳幹の後方、後頭葉のに下方に位置しています。
小脳が行う運動調節としては主に3つあると言われており…
①姿勢と体の平衡の維持
②様々な負荷に対する筋緊張の動的な調節
③複雑な運動時における種々の筋群の活動の統合
と言われています。
簡単に言うと…
①バランスの調整
②四肢を動かす際の体幹の姿勢調節
③四肢を動かす時の四肢の微調整
とも言えるのではないかと思います。
なので、小脳が障害されると…
・失調(運動がスムーズに行えず、ぎこちなくなってしまうこと)
・めまい、眼振
・企図振戦(体が震えてしまうこと)
・筋緊張異常
など他にも多々ありますが、上記のような症状が生じると言われています。
ここまではセラピストの方であれば、ご存知だと思います♪
上記のことに加え、小脳で重要となってくるのが、
小脳は大きさ(面積)で、脳全体の10%程といわれている…
にも関わらず!!!!!!
ニューロン(神経細胞)では、脳全体の50%程のニューロンを含んでいるそうです!!!!!!!!!!!!
ニューロンの数は大脳皮質は約200億個、
小脳は約800億個といわれています。
な・の・で、運動生成するうえでも小脳は重要になってくるということです!!!!
ここで、前回のブログに内容を戻しますが(前回のブログ↓)…
感覚入力によって「視床→第一次体性感覚野」を上行する経路と「小脳」を上行する経路があり、小脳にも感覚入力の情報がいくことをお伝えしました。
よって感覚入力により、上記に記載したような…
小脳の役割(バランス調整や四肢を動かす際の微調整など)や脳にある膨大なニューロンに影響を与える
ということです♪
なので、上肢に感覚入力したことにより、上肢のパフォーマンスは変化したのではないかと考えられます♪
もう少し小脳について説明したいことがありますので、それは次回お伝えできたらと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました♪
感覚入力後の上肢の変化 の続き
いつもブログを見て頂きありがとうございます。
今回は前回の続きで、感覚入力後の上肢の変化についてお話していきます。
では今回はさっそく感覚入力がどのように脳(中枢神経系)に入力されていくかの上行路のお話をしていきますね♪
感覚は大きく分けて2つ
①意識できる感覚
②意識できない感覚
があると言われています♪
どういうことかと言うと…
①意識できる感覚
⇒視床を経由し、皮質(一次体性感覚野)へ入力
②意識できない感覚
⇒小脳へ入力
する上行路があります。
我々は皮質へ入力されて意識・認識できますので、②は小脳までしか上行しませんので、意識できないということになります。
そして①意識できる感覚②意識できない感覚からさらに…
7つに大別できると言われています。
①外側脊髄視床路:主に温痛覚に関与
②前脊髄視床路:主に粗大な触圧覚、振動覚に関与
③後外側路(後索路):主に識別性の触圧覚、振動覚に関与
④三叉神経視床路:主に顔面、口腔の感覚に関与
⑤後脊髄小脳路:主にTh1~L1レベルの非意識性の感覚に関与
⑥前脊髄小脳路:主にL2以下の非意識性の感覚に関与
⑦副楔状束核小脳路:主に上肢の非意識性の感覚に関与
上記の7つで…
赤字は〇〇視床路なので、視床へ上行する経路であり、意識できる感覚の中身
青字は〇〇小脳路なので、小脳へ上行する経路であり、意識できない感覚の中身
となります♪
で、結局前回のブログからなぜ感覚で上肢に変化がもたらせるのか?
っていうことですが…
上記のように感覚は上行し、主に視床と小脳に上っていくということです♪
つまり、感覚入力という治療において…
視床や小脳に関与することができる
ということです♪
その結果
上肢に変化がもたらすことができたのではないか
と考えています♪
そうなってくると…じゃあ視床と小脳ってなにしてるの?
で、なんで上肢に変化が得られるの?
ってなってきますね♪
そう!!
なので次回は視床と小脳についてまとめていきたいと思います♪
感覚入力後の上肢の変化
久しぶりの更新となってしまいました。
今回はブログを始めて、初めて!!
臨床での出来事についてまとめていこうと思います♪
私が現在働かせて頂いている場所は回復期リハビリテーション病院であり、7-8割の方が脳卒中などの中枢疾患を呈された方です。
そして今回は「視床出血」を呈された方に対して介入させて頂いたときの「上肢に関わる」お話…
症例様は上記診断を受け
麻痺はBrs-T上肢・手指ともにstageⅣ~V・下肢はstageⅢ
感覚は上下肢ともに重度鈍麻~脱失
を呈されており、失調症状は認められていない方でした。
基本動作では起居動作や端坐位は自立しており、
立ち上がりや立位動作は見守り~一部介助が必要な方でした。
みなさんが臨床上でよく出会うことの多い、麻痺は軽度であり、感覚障害が重度。
というような視床の病態であるのではないかと思います。
つまり…
麻痺は軽度である…
(上肢挙上を単独でオーダーすればできる。手指屈伸をオーダーすればできる)
なのに日常生活では上肢を使用できていない!使用できないと感じている!
(セラピスト目線であると、多少使用できそうだけど…と思う)
ざっくりいうとそのような状態の方でした。
おそらくこの症例様は、感覚障害による
「身体図式(ボディースキーマ)の障害」
「筋出力のフィードバックが得られない」
「物体、物品など把持した際の感覚のフィードバックが得られない」
ことなどにより…
「使えない上肢(手)」
と認識していると思われ、麻痺側上肢を日常生活場面ではほぼ使用できない状態である印象でした。
この方に対して私は、治療の一部で…
① ビー玉のつまみ・運搬・リリースの動きを確認
② 上肢に対しての感覚入力の治療
③ ①と同じ課題を通して変化を確認
をさせて頂きました。
すると②の前後で明らかに「手指のつまみ方」「課題の処理速度」「運搬動作時の上肢の操作性」などに変化を認めました。
なによりもこの際に症例様自身が変化に気づき…
「もの凄く変わったね」
と笑顔で言ってくださったのが、非常に嬉しく思いました♪
今回の介入で学ばせて頂くことができた事は…
”上肢への感覚入力”
で、「上肢になんらかのよい影響をもたらすことができる」と考察することができました(もちろん上肢においては即時的変化のみでなく、機能回復することにより、どのように行動変容が起き、どう生活で使用しているかが大切だと思います。が、今回は即時的な変化が得られたことを考察していきます)。
。
なので次回のブログで…
感覚入力でなぜ
「上肢になんらかのよい影響をもたらすこと」
ができたのかの考察をお話したいと思います。
感覚はどの経路で入力されていくのか?
どうのように脳(中枢神経系)へ影響をもたらすのか?
etc…
を次回まとめてみたいと思います♪
運動が起こるメカニズム③ ~前皮質脊髄路について~
いつもブログを見て頂きありがとうございます♪
今回は前皮質脊髄路についてお話していきたいと思います。
私がセラピストになってしばらくの間、主にイメージしていた下行路、麻痺になってしまう影響は「外側皮質脊髄路」だと思っていました…。
そして経験の浅いセラピストの方もおそらく同じように運動を起こしている下行路、片麻痺を作りだしているのは「外側皮質脊髄路」と考えているのではないかと思います。
もちろん脳卒中の多くの方は「外側皮質脊髄路」の一部の経路(放線冠や内包後脚など)で損傷をきたし、私たちの目の前にいらっしゃると思います。
しかし前回のブログ
で簡単にお話したように、運動をする、運動を実現して頂くためには、外側皮質脊髄路以外も考慮していく必要がありますよ♪関節運動を起こしてくれてるのは外側皮質脊髄路だけでないですよ♪
とのお話をさせて頂きました。
では本題の前皮質脊髄路についてお話していきます。
前皮質脊髄路の経路としては主に
①一次運動野から起始
②放線冠や内包後脚、大脳脚、橋などを下行
③延髄下端へ下行
(*ここで錐体交叉し、対側の側索を通り、脊髄前角へ下行していく線維を外側皮質脊髄路という!)
④錐体交叉せず、同側の前索を通り、脊髄前角へ下行
する線維のことを言います。
つまり皮質脊髄路が…
延髄で交叉する約80%の線維:外側皮質脊髄路(背外側系に分類)
延髄で交叉しない約20%の線維:前皮質脊髄路(腹内側系に分類)
ということとなります。
外側皮質脊髄路は主に対側の上下肢の遠位筋を優位に支配しているのに対し…
前皮質脊髄路は主に同側の上肢近位筋・体幹筋を支配していると言われています。
なのでみなさんも臨床上、上肢の麻痺があっても、肩甲帯の挙上や下制等の動きだけは保たれている患者様・利用者様がいるな~。
と感じる場合が多いのではないかと感じます。
その臨床所見の理由としては前皮質脊髄路は同側性であり、上肢近位筋・体幹筋を支配しているということを考えれば、起こりえる現象ということですね♪
なのでこの場合臨床上よく肩甲帯の代償がででしまうと悪いことのようにされてしまうことが多い印象ですが、生きている下行路があるということなので、それをうまく利用して上肢操作・生活動作等へつなげていくことが大切であると感じています♪
では今回はここまでにし、次回はまた違う下行路について説明していきたいと思います♪
最後までお読み頂きありがとうございました♪
運動が起こるメカニズム② ~下行路について~
いつもブログを見て頂きありがとうございます♪
前回は主に外側皮質脊髄路についてお話させて頂きました。
本日はその他の下行路について少し触れていきたいと思います!
前回のブログでお話したように
人の運動は脊髄前角あるα運動ニューロンに命令が行かないと起きない
とお話させて頂きました。
そこに、外側皮質脊髄路も皮質~放線冠~内包後脚~大脳脚~延髄を通り錐体交叉し、脊髄を下行し、α運動ニューロンに命令が届き、運動が起こるというお話です♪
私は臨床にでて脳卒中の方とのリハビリテーションの中で、麻痺を改善していくには上記の経路つまり…外側皮質脊髄路をどう賦活・改善していくことかを考えていました。
そしてなんとなく、
麻痺=外側皮質脊髄路
の障害と捉えているセラピストが多いのではないかと思いますがいかがでしょうか?
とにかく私はずっとそう思っていました。恥ずかしいことに….(泣)
しかし
この画像(下記URLから引用)
のように脊髄前角(図では運動細胞と記載)に下行していく下行路は外側皮質脊髄路以外にもあります。
現在は主に下行路を
腹内側系(図の左側)・背外側系(図の右側)
の二種類に大別することが増えました(私が学生の頃は錐体路・錐体外路で習ったと思いますが)。
また腹内側系・背外側系の詳しいお話はいつかするとして…
とにかくこのことからお伝えしたいこととしては、
運動を改善していくとき、脳卒中の方の麻痺を改善していくと戦略を経てていくときに外側皮質脊髄路だけを考えるだけでなく…
その他の下行路(赤核脊髄路・前皮質脊髄路・前庭脊髄路・網様体脊髄路・視蓋脊髄路など)も考えていきましょうね♪
ということです。
なぜなら全ての下行路はα運動ニューロンに命令を出しているからです♪
つまり様々な下行路がα運動ニューロンに集約されていますよ♪
ということなんです。
また次回は外側皮質脊髄路以外の下行路のお話をしていければと考えています。
いつも最後までお読み頂き本当にありがとうございます。